忌中の簾を下げないといけませんか?
Q『人が亡くなりますと、忌中と紙に書いた簾(すだれ)を玄関の表に下げますが、なんとなく人が亡くなったということを知らせているようで、嫌です。下げなくてもいいですか?』
A『この仏教における『忌中』と書いた簾の発想は、もともとは古代の葬送における、人の死が「穢れている」という考え方から来ているようです。古事記によりますと、死後の世界である 黄泉の国 は、死体に蛆がたかる汚い世界と描かれています。死の世界は恐ろしく、生きている者を引きづり込む力があると考えられており、つまるところ人の死が穢れ、死した者の霊が、生きている者を 黄泉の世界 へ引きづり込む恐ろしいものと考えられおり、このような考え方が仏教にも伝わったということになります。
ただ、この穢れは、神道と仏教(穢れ自体がないとされる宗派もあります)で異なりがあり、神道では「人の死そのものが穢れであり、死者も穢れに属す」とされている一方、仏教では「人の死により穢れが訪れ、故人や遺族親族、ご縁のある人々、他人にも悪影響を及ぼす」とされているようです。仏教における忌中の簾を下げるのも忌中(四十九日までの間)の間は、穢れが強く、その穢れを周りの人々に及ぼさないことを告知する意味から簾を下げるということになったわけです。
しかしこの考えは、仏教信者の誤解を招くことから、徐々に見直されるようになり、また最近では、家族葬など内々で行う葬儀が増えたことや、葬儀により留守にする為防犯の意味で簾を下げないというご家庭が増えているようです。このようなことから、 忌中の簾 を下げなくても宜しいかと思います。』