全ての方へ葬送の権利を(生保葬)④
>>>前回のブログの続き
先月更新したブログでは葬送の本質は、葬儀の大きさではなく、質素であっても故人を送る気持ちが大切であること、そして生活保護を受けていても、最低限の葬儀をしてあげることは残された者のつとめであり、その気持ちを無下にしない為にも、葬儀を司る者である宗教者や葬儀社、行政はもっとそれらの方々に歩みよる必要があること、またその為に変えられる部分に関しては変えてゆく努力が必要であることを綴り、閉じさせて頂きました。
では、私達葬儀を司る者たちは、生活保護受給者の方々の為に何が出来るのでしょうか?受給を受けている方々にとって、一番気苦労を感じる部分は、やはり金銭面であると思われます。葬祭扶助の基本をおさらいしますが、生活保護受給者が葬儀を執り行う場合、行政より約20万円(旭川市)の葬祭扶扶助を受けることが出来ることは先のブログでもご紹介しました。
条件として、①葬祭を行う喪主が生保受給者であること(亡くなった方が生保を受けている場合は葬祭扶助は受け取れません)、②働いている身寄りがいないこと(支払い能力:労働に従事し収入がある人:がある者が肉親にいる場合は、その方が葬儀費用を支払う)、③公けに葬祭を行わないこと(新聞などに掲載した場合香典による収入が入ることから、助成を受けることが出来なくなります。)となっています。例えば、③番目の「公けに葬儀を行わない」という部分を「葬儀を行うことが出来る」というように変えてみてはいかがでしょうか。
葬儀を行う場合、みなさんご承知のように、縁者のご厚意でご香典を頂きます。その頂いたご香典より、葬儀費用のお支払を致しますが、ある程度の香典を頂くことが出来れば葬祭に掛る負担を減らす事が出来ます(葬儀の香典収入の内訳:【旭川市における香典収入の平均金額】:遺族親族平均2万円、一般会葬者平均5,000円~7,000円。例えば遺族親族30名とした場合、単純に夫婦で一香典としたとき15組×2万円=30万円 一般50名×5,000円として25万円 合計55万円)。
もちろん、香典収入があれば良いというわけではなく、葬儀費用の負担を出来る限り、抑える必要があり、その為には葬儀社と宗教者の協力が不可欠となります。まず弊社が関係する葬祭費の部分になりますが、適用としては、祭壇費、霊柩費、写真、香典返し、引物、納棺等々になりますが、最低限として約45万円(あくまでも弊社御見積りの場合)ほど費用がかかります。仮に一般葬で執り行い( )に書いたように、収入が55万円見込まれたのであれば、残り10万円近くありますから、宗教者が理解を示して下さいますれば、収入内で葬儀を納めることが可能です。もちろん葬祭扶助による助成は必要なくなります。
仮に、費用を越えたとして、差額分を葬祭扶助から助成を頂きますから受給者の負担はございません。また葬祭扶助においても限度額の20万円を超えることはありませんので(現在、葬祭扶助として葬儀費用における助成の適用範囲は、祭壇、遺影写真、霊柩車、納棺、会場費となっています。香典返し、引物、飲食費、寺院御布施などは含まれません。先に挙げた葬祭費約45万円は、香典返し、引物、飲食費を含んだ金額です)、行政の負担も軽減されることになります。
もちろん、今の例は、あくまでも可能性です。香典収入ありきの考え方で、不謹慎かもしれませんが、親戚縁者の協力がこれらを可能にします。また葬儀に関わる宗教者、行政、葬儀社が歩み寄る気持ちを持つことで、十分に葬儀を行うことが出来るのです。
この度の震災では、多くの方々がお亡くなりになりました。震災の前までは、独居老人やニート、それらの方々に限らず社会全体的に、人間関係が希薄となっていることが問題視されました。葬儀業界においても、それらの問題の延長上なのか、お付き合いがないという理由から、お通夜、葬儀を執り行わない「直葬(ちょくそう)」という形式で故人をお送りする喪家様が増えているように思われます。
しかしこの震災が、人との関わりの尊さを示してくれました。私自身は、震災が発生した当時、自分や家族、会社のことを守ることを中心に考え、被災者の方々に何もしてあげることは出来ませんでした。今もこれといって大きなことは出来てはいませんが、生活に余裕のある月は募金をしたり、電気などをこまめに消したり、出来得る範囲の中で協力しようとする意識が芽生えました。残念なことですが、どん底に落ちることで、人として大切なこと「絆」に改めて気付かされたのです。
まだ、震災の被害者の多くが、発見されずにいます。大切な方々を送ることが叶わない状況にあり、そしてそのことを悲しんでいる人がまだまだたくさんいるのです。
その方々と比べたとき、今の私達には「大切な方を送ることが出来る環境」が整っていいます。十分な形ではないとしても、形のある葬送をしてあげることが、故人にとっても、そしてあなた自身にとっても大切なことなのではないでしょうか。